
超能力者の先生とのファーストコンタクト後、とても爽快な気持ちになり、車をスムーズに○○高原まで走らせた。今晩宿泊する温泉宿があるからだ。
その宿は山頂にあり、到着まで山道を三半規管がおかしくなる程、くねくねと登り続けなければならない。ボディを軋ませながら登ったはいいが、温泉に浸かる事なく、駐車場で待機するだけの車には迷惑な話しだ。
やっとの思いで宿に到着し、地元出身のおばあちゃんに案内され入室。
「東京から?!よくいらっしゃいましたねぇ。今日は他にも女性4人組が予約していたんだけど、昨日の悪天候もあって、キャンセルになったんですよ」と、おばあちゃんは雑談を交え話してくれた。
実は前日、夜中まで台風が猛威を振るい、大変な騒ぎだった。台風直撃の真っ只中、女性だけのグループが、嫌がらせのように続く細い山道を登り、消耗しながらやっとの思いで辿り着けるような僻地に佇む宿を、嵐の状況下でキャンセルするのも納得出来る。
しかし一転、当日は快晴になる。そしてこの日、鈍感な僕でも、山に何かの気配を感じ、蠢いているのを予知していた。
前日まともな睡眠を取らず、高速道路を飛ばして来たので、温泉の泉質も、魅力的だったはずの食事も、自分の記憶に留めておく事が出来ない。
それより何より、超能力者の女性の件で、頭が一杯だった。
翌日、宿をチェックアウトする際、感じの良いフロントの女性従業員さんに、
「○○○○神社へ御参りに行きたいんですが…なんか参拝客が少なくて、ゆっくり御参りが出来るって聞いて来ましたが…」
そのように僕が尋ねると、フロントの女性は、
「一応、一宮なんですけどね…地元では一番大切にされている御宮です」

宿を出発。前日登って来た山道を、再度蛇行を繰り返し、軽い吐き気を覚えながら下り続ける。
麓に降りて、カーナビに○○○○神社と入力。出発するが、近隣にあるはずの神社が、なかなか現れてくれない。かなりの距離を走り、やっとカーナビの音声から到着を知らせてきた。
しかし、どこを探してもそれらしき神社は見当たらない。
近くに土産物を扱うドライブインがあり、そこに車を停め、小走りで観光案内所へ飛び込んだ。
「あのぅ、○○○○神社に行きたいのですが…」
「逆方向ですよ」
おじさんは地図を僕に見せながら教えてくれた。
何故か、カーナビが誤作動を起こす。何回入力しても駄目なので、観光案内所のおじさんに頂いたマップを頼りに、フラフラと車を走らせる。おもしろくもなんともない、見覚えのある、一度通過して来た道を。
暫く来た道を戻ると、左手に神社の看板を発見。
広い駐車場に、参拝者らしき御家族連れの車が2台停まっているだけ。これならゆっくり御参りが出来そうだ。
鳥居を通り抜けると、すぐに象徴的な太閤橋が架かっている。子供みたくワクワクしながら、急な傾斜の付いた太鼓橋を渡り、拝殿へと向かった。
歩みを進めると、拝殿左手にあった枝社から、
「こちらに来なさい」
というような声がしたように感じたので、
「本殿で御参りしてから、順番に必ず御参りしますね」と、軽く会釈をしながら心の中で呟いた。
その直後、パツン!と、音を立てて僕の胸の辺りめがけ、何かが飛び込んだのを感じ取った。その感覚は決して軟らかい雰囲気のものではなく、少し痛みすら感じたのを記憶している。
なんだろう?今のは…。首を傾げながら、一通り御参りを済ませた帰り道、参道を歩いていると、右手に石組みと護摩壇の跡を見付ける。金剛童子堂だ。

調べてみたらその昔、修験道者さん達は修行の為、この場所から入山する前に、護摩壇で祈祷をし、険しくも厳しい霊峰を目指し、山へ入って行ったと知った。

息を止めながら、護摩壇の周囲を3回廻る事が出来たら願いが叶うと書いてある。
当然廻る、廻るでしょ、そりゃぁ。
病で肺活量が落ちている僕には結構しんどいチャレンジだが、周囲に人の気配がないのも手伝って、かなり酷い形相で、もがき苦しみながら金ちゃん走りのような格好でゴール?した。願いが叶うといいな。
東京へ向かう帰りの車中で天気が急変し、恐ろしい位の雨雲に遭遇した。僅かな時間で勢いよく雨が降りだし、ワイパーが効かない。しかも高速道路上。みんなハザードを点灯させ徐行を始める。
とにかく豪雨で前が見えない。通常レベルの雨ではなかった。正に長滝から暴れ落ちる、激しい水流の如く。

東京に戻ると、高速道路上で体験した豪雨が嘘だったかのように、一粒の雨も落ちていない。
玄関前に立ち、もぞもぞと自宅の鍵を探す。
バッグから漸く鍵が見付かり、ドアノブに鍵を差し込んだ瞬間、背後から尋常ではない音が聴こえて来た。雨だ。
いや、雨のレベルではない。滝だ。

ゴォーッと凄まじい音を立て、勢いよく飛沫が僕の身体を被い尽くす。怖くなって室内に逃げ込み、暫し呆然とする。
その時はまだ、自分自身の変化に微塵も気が付いていなかった…。
数日後、僕は都内でバイクを運転中、事故を起こしてしまう。
見通しの悪い坂道を、結構なスピードで走り抜けようとした際、路肩に駐車していた車が急に発進した。
慌ててブレーキをかけたのが災いし、ABSを装備していない400ccのバイクは、簡単にブレーキがロックし、なぎ倒され、僕の身体を空中へ放り出し、火花を散らしながら、前方を走っていた車に激しく衝突して止まった。
バイクが衝突した車の運転手さんに幸い怪我はなく、大事には至らなかったが、僕が乗っていたバイクは大破し、当たり前だが来ていた服はボロボロに敗れ、履いていた厚手のスニーカーは、片足が真っ二つに裂けている。
しかし僕は、ほぼ無傷だった。膝に少しかすり傷を作った程度。一切痛みは何処にもない。
不思議なのは、金剛童子堂のある○○○○神社から戻って来てから、事故を起こすまでに、自分が自分でないような、変な感覚をずっと抱いていた事だ。
何かおかしい。僕はこんなにも冷静な人間ではない。
身体が放り出された瞬間も、ゆっくりと視界から情報としての映像が流れて行くだけで、動揺は勿論、感情の変化すら無かった。
事故処理に対応してくれている警察官、気が動転して怒鳴り散らす被害者御夫婦。
そんな中、他人事のようにその光景を冷めた眼で観察している自分がいる。
事故が事故だけに、怪我をしていない僕を見て、皆一応に首を傾げていた。
数日後、スピ界のスーパースター○○先生の道場へ体験入門。
○○先生は執筆した書籍の売上げを順調に伸ばし、その当時は極度に御忙しい状況が続いていたようで、風邪で体調を崩し、声すら出せない大変御辛そうな状況で稽古をつけていた。
翌週、再度超能力者の先生の施術を受けに○○○○へ。
先生に、
「この前の日曜日、○○先生の道場へ行きましたよ」と御伝えすると、
「○○先生、体調崩してなかったか?あの人、喉も弱いからなぁ、声も出せなくなるぞ」と呟いた。
「!!……先生、なんで解るんですか…」
先生は全て遠隔でお見通しなのだ。
施術が始まり、寝転がっている僕に、ゆらゆらと手のひらを動かしながら、先生は静かに囁いた。
「あんた、変わったやろ…」
ああ、やっぱり、先生には僕がずっと抱えていた違和感、変調が話さなくても伝わるんだ…。
「うわっ、先生すごっ!先生には解るんですねぇ…。そうなんです、変な感覚がずっと続いてまして、バイクで事故起こしちゃいましたぁ」
誰も気が付かない、その変化を、先生は既に察知している。そして先生は続けて仰った。
「あんた、龍神さんついたなぁ」
「は?…」
僕のバカさ加減では、先生の仰っている意味が、その時点では皆目見当がつかなかった…。

https://youtu.be/lElCzhjiPX8
2007年のスーパーボウルに出演した時の殿下。
Purple Rainを激唱。鳥肌が立つ感動的な舞台は、スーパーボウルの歴史上、初の雨空の中…。アクエリアンエイジの先駆者であり、ヤフアの信奉者である殿下。ミネアポリスサウンドの申し子を包み込む紫色の雨は、海王星から降り注ぐ!。